ちょっ!5Gに期待しすぎ・・・?
新しい技術は好きです。また、5Gにも期待していますが、世間で言われている「5Gで変わること」が5Gとあまり関係ないのでは?と 思うのでまとめてみました。
5Gが使われないとか、5Gが優れていないという事ではなく、「5Gが無いと実現できない」というわけじゃないでしょ?という視点で書いています。
あくまで、個人的な考察です。
「5Gで変わる」といわれているもの
期待度 | ||
自動運転 | ☆☆☆☆☆ | 自動運転は確実に来ますが5Gはあまり関係なくない? |
医療 | ☆☆☆☆☆ | なぜそこに移動通信システムを使う!?有線でやってよ |
動画 | ☆☆☆☆★ | 確実に増えていくでしょう。でも5G必要? |
VR/AR | ☆☆☆★★ | やり方次第だけど、移動通信の必要性があるか? |
IoT | ☆☆☆★★ | 4Gじゃだめ?5Gが必須のアイディアがあれば化けるか? |
スマート農業 | ☆☆★★★ | イニシャルコスト VS ランニングコスト |
シンクライアント | ☆★★★★ | 個人的にやってほしい分野、いやできるでしょ! |
監視カメラ | ★★★★★ | 5Gで実現する!夢のような監視社会 |
自動運転
期待度:☆☆☆☆☆ 自動運転の時代は確実に来るが、5Gはあまり関係ないのでは?
5Gで自動運転が進むという事がよく上げられますが、これに関しては大いに疑問です。
車は、アクセルと、ブレーキと、ハンドルの操作を行う必要があり、「遅延が許されないため5Gの低遅延が必要だ」というロジックで説明されていることが多いと感じるのですが
車の制御には高度な信頼性が必要とされます。リアルタイムの処理が必要な制御において、「たまたま通信できなかった」とか「帯域が混んでいたので通信が遅れた」という事は許されません。
5Gは所詮無線通信であり、通信できないエリアをゼロにすることはできないでしょうし、限りなくゼロにできたとしても、「道路上に通信できないエリアをゼロにしたので、この通信に命を預けても大丈夫です」と宣言することはできないでしょう。
そのため、自動運転のコアの制御の部分はスタンドアローンで完結している必要があります。コアの部分とは周辺環境の認識とアクセル、ブレーキ、ハンドルの制御量の決定と実際の操作の部分になります。
よって5Gが低遅延、大容量通信ができるから、自動運転が可能になるというのには無理があるかと感じています。
もちろん、最新の地図データに更新したり、補助的な形で周辺環境情報を取得するために通信は必要となると思われます。また、トラブル発生時に管制室のサポートを受けるにも通信は必要ですが、管制センターからラジコンのように運転するのではなく、管制室は迂回路の指示をだす程度で、ハンドル、ブレーキ、アクセルは自動運転側が責任を持ったほうが安全だと考えます。よって、自動運転に5Gが必須であるとは思えません。
自動運転が可能になれば、運転手が運転から解放されるので、移動中に映画を見たり、テレビ会議を行うために5Gがあると快適だというロジックだったら納得できますが・・・。これは自動運転とは直接関係ない話ですね。
5Gが必須になるシチュエーションとしては、歩行者が持っているスマートフォンの位置情報を利用して、歩行者が物陰から飛び出してくるのを、車両のセンサが検知する前に車両に伝える場合など、限定的な状況に限られるのではないかと想像します。
遠隔医療
期待度:☆☆☆☆☆ なぜそこで移動通信システムを使う!?有線でやってよ
5Gができれば遠隔で医療が実現できるという話もよく書かれています。
遠隔医療について、例で挙げられるのは、遠隔問診や遠隔手術です。
遠隔問診や病院間での情報共有
5Gは移動通信システムなわけで、移動中にお医者さんが問診したり、患者さんが移動中に問診するというのは・・・まぁ、ありうるかもしれませんが「わざわざ移動中に?」と思ってしまいます。
「電車やバスの中、喫茶店で問診するの?いやいや、病院いけないとしても、せめて自宅じゃだめですか?」と思ってしまいます。
自宅だったら、既に光ファイバーで高速通信ができるわけで、遠隔問診が普及していないのは5Gがないからではありませんよね?法整備だったり、病院の体制だったりとほかの問題がネックになっているのではないでしょうか?
患者さんとお医者さんのコミュニケーションやお医者さん間のコミュニケーションに通信が必要なのは理解できますが、 5Gと遠隔問診は別次元の話だと思います。
ただ、災害時は5Gが役立つように思います。
遠隔手術
さらに、びっくりするのが遠隔手術ができるようになるという話です。
遠隔手術を行うのだったら、通信に高い信頼性が求められます。
自動運転の項目で説明したことと同じですが、「帯域が混んでいたのでメスが滑らかに動かなくて死んでしまいました。ベストエフォートなんで許してください」は通用しません。
遠隔手術を行うなら、病院間に専用回線を引いて、極めて高い信頼性と安定性を確保したうえで遠隔手術を行い、仮に通信にトラブルが発生したとしても、患者のいる病院に待機させておいた執刀医が手術を引き継ぐぐらいのバックアップ体制が必要だと考えられます。
また、超低遅延の通信ができるので、世界中の名医の執刀をどこにいても受けられるという話も聞きます。例えば、東京に患者がいて、執刀医がニューヨークにいるとします。東京とニューヨーク間は直線距離で約1万km離れています。光ファイバーの中を進む光の速度は約20万km/秒ですので、どう頑張っても往復で100msの遅延が発生します。実際には、増幅器とかスイッチデバイスを経由するのでもっと遅くなります。5Gの無線通信区間で1msの超低遅延が実現できても、その他の通信経路を含めて超低遅延を実現することはできません。5Gで超低遅延処理が可能なのは、物理的に距離の近い基地局などにコンピュータを設置して処理するエッジコンピューティングを使う場合に限られるでしょう。
5Gの出番があるとしたら、患者を搬送できない場所や、搬送中の救急車やヘリの中で、緊急オペを行わないと患者が死んでしまうような状況で、かつ、遠隔操作で執刀ができるロボットがその場にいて、通信が不具合によりオペが失敗しても許される法整備や契約が行えた場合になるでしょう。
このようなシチュエーションはあまりないかもしれませんが・・・
ただし、「確実に死ぬのなら、ベストエフォートであっても生きる可能性があれば治療してほしい」と思うのでハードルは高いと思いますが実現出来ることに期待はします。
ですが、とても難しいと思ってしまいます。
動画
期待度:☆☆☆☆★ 動画は確実に増えるでしょう。でも5Gが必要?
5Gで動画コンテンツの量が増えて、質も上がる という話もよく説明されます。
動画はデータが重いので、5Gを説明するうえで一番想像しやすいと思います。
今後も、 動画や音声コンテンツは増えるのは間違いないでしょう。
ただし、動画や音声を視聴するのに10Gbpsとか必要だと思いますか?
二時間の映画が3秒でダウンロードできるといわれていますが、映画を見るには2時間かかります。視聴時間より何倍も速くダウンロードする必要はありません。 今と同じようにストリーミング再生すればよいのです。
高解像度映像を移動端末で見る?5Gが必要?
通信速度が増えるので高画質の映像にすることはできますが、人間はスマートフォンの小さい画面で4K解像度を認識できません。
大画面で動画を視聴するのなら解像度の違いは認識できるようになりますが、大画面があるのは建物の中ですよね。
建物の中なら光回線+無線LANで接続すれば良いわけで、移動通信システムを使う必要はありません。
ちなみに、4Kの視聴には24Mbpsの通信速度が必要といわれております。
24Mbps程度の速度は、4G通信で実現できています。
そのため4K動画を見るのに、5Gが必要だというロジックは成り立ちません。
マルチアングルの高解像度映像をスマートフォンなどの端末で視聴するには5Gは必要か?
マルチアングルとは、複数の方向から映像を収録し、カメラを切り替えることで様々な方向からの映像を得ることができる機能です。
マルチアングルは、決して新しい言葉ではなくDVDで実現されています。実際にDVDで使ったことがある方も多いのではないでしょうか?
私はマルチアングルには二種類あるとお思っています。一つはDVDのように、どのカメラからの画像を見るか切り替えるだけのマルチアングルです。
もう一つは、 複数のカメラ(3Dカメラかもしれません)で撮影した画像を処理して、カメラが設置されていない場所からの画像を生成し、どんな場所、角度からの動画も生成する様な技術です。
この場合は、スポーツ観戦で審判視点や選手視点の画像を生成したり、ライブ画像でアーティストの目の前にいる様な視点など、現実では見ることのない視点の映像を生成し視聴するなどユーザーが好きな場所に移動してそこからの画像を見るというような感じです。
話を通信に戻します。マルチアングルでライブ視聴やスポーツを観戦するのに必要な通信スペックは、アングルを変える処理を端末側で行うかサーバー側で行うかによって変わってきます。
端末側で行うのであれば、三次元の画像動画又は、複数視点からの2次元動画を端末に取り込む必要があるので5Gの通信速度が必要になる可能性があります。
サーバー側で処理を行う場合は、普通の動画と変わらず1つの視点からの二次元動画を端末に送ればよいので5Gの必要性はないかと考えられます。
ただし、サーバー側で処理を行う場合は、視点切り替え指示を行ってからの遅延が発生するので、発生する遅延を最小限にするためには、5Gが必要かもしれません。
ただし、これは、あくまでも携帯端末でマルチアングルの動画を視聴する話です。
実際は、スポーツ観戦やライブ視聴は家の大画面で見ることも多いと思います。
家庭用の通信サービスでは現在でも、10Gbpsの光回線を使用することができます。そのため、5Gと同じような速度が出せるはずです。
そのため、「5Gがないからマルチアングルでの動画視聴ができない」というわけではなく、ニーズが少ないとか、通信以外の技術開発ができていないなど、通信以外に課題があるのではないかと思います。
以上のように5Gが普及すると動画の質が劇的によくなるという事はなく、現状の4Gで動画を見る際に困っている「混雑していると通信速度が低下して動画が一時停止してしまう」とか「通信しすぎて速度制限に引っかかり動画が一時停止してしまう」という事が無くなる(又は少なくなる)程度ではないでしょうか。
VR/AR
期待度:☆☆☆★★ やり方次第だけど、移動通信の必要があるのか?
ポケモンGOのようなARは、あまり通信とは関係ないので、ここでは、ヘッドマウントディスプレイを装着して仮想空間に入るARやVRをイメージします。
この領域については、5Gに期待したい分野です。
VRの領域で5Gについて考える際は、5Gを使ってどこの部分を受け持とうとしているかがポイントだと思います。
5GがあればVRゲームが楽しめる?
まずは、VRのゲームを行うことを考えてみます。
ヘッドマウントディスプレイを使って仮想空間に入る場合、ネックとなるのはGPUやCPUの処理能力になります。
GPUやCPUの中でインプット情報(銃を撃つとか、視点を変えるとか)や三次元空間内の環境の情報(他のユーザの動きだったり太陽の位置とか)を元に、三次元空間がどのように変化するかを計算し、さらに三次元空間の中で任意の視点での画像をリアルタイムで生成します。
その処理には強力なコンピューティングパワーを必要とします。
強力なコンピューティングパワーをスマートフォンや、ヘッドマウントディスプレイに搭載するのは難しく、そのようなパワーを持ったPCはゲーミングPCと呼ばれ、大抵はデスクトップ型の高性能PCか、ノートPCでも大型のものになってしまいます。
ゲーミングPCのGPUで生成した画像をヘッドマウントディスプレイに転送し、それをヘッドマウントディスプレイで表示するわけですが、ヘッドマウントディスプレイに転送する速度は8Gbps程度は必要だといわれています。
8Gbpsたっだら、5Gの理論転送速度以下です。
そのため、コンピューティングパワーが必要な処理をサーバーで受け持ち、サーバーが生成した画像を転送する部分を5Gが受け持ち、表示する部分のみヘッドマウントディスプレイが受け持てばヘッドマウントディスプレイ側に、高価で大きく重いGPUがなくても、VRゲームを楽しめるようになります!
この考え方をベースに5Gの懸念点を考えると
5Gで8Gbpsの実効速度が出るのだろうかという点です。5Gは10~20Gbpsの転送速度が出るといわれていますが、5Gのサービスは4Gの時と同じようにベストエフォートになると考えられます。
4Gは50Mbps~1.5Gpbsの通信速度が出るそうですが、実効速度はどうでしょう?実際には理論値の1/10も出ればいいほうかもしれませんね。
5Gもベストエフォートで実効速度が理論値の1/10程度しか出ない場合、5Gの理論値が仮に20Gbpsであったとしても実効速度は2Gbps、超絶よくて5Gbps程度じゃないでしょうか。(実際には1Gbpsも出ればすごいと思いますが)
そうなると、ヘッドマウントディスプレイに転送する速度としては足りなくなります。
もちろん、データを圧縮して転送したり三次元処理の一部をヘッドマウントディスプレイ側に担当させたりなど、工夫はできます。
ですが、ヘッドマウントディスプレイ側で処理する量が増えるとヘッドマウントディスプレイが大型化し重量も増え、高価になるでしょう。
また、ヘッドマウントディスプレイ側で圧縮された動画を解凍すると遅延も発生してしまい、5Gの低遅延という特徴を相殺してしまう可能性もあります。
少し意地悪く書きましたが、CPUやGPUの進化も凄まじいので、うまいところでバランスをとれば5Gが使えるようになるとVRが普及するというロジックも無くはないと考えます。
VR動画はどう?
上記ではVRゲームについて記述しましたが、VR動画ではどうでしょう?
VR動画の場合は、固定の位置から撮影した360°の立体画像を見るわけです。
ゲームではないので、ユーザーがインプットする情報やゲーム内の環境情報をもとに、リアルタイムにフィードバックするような強力なコンピューティングパワーは必要ありません。
ヘッドマウントディスプレイ側が行う処理は、データの解凍とヘッドマウントディスプレイの角度に応じて描画する画像の位置を変更する程度で済みます。
また、リアルタイムのフィードバックが必要ないので、遅延が問題になりません。そのため、圧縮したデータを、ヘッドマウントディスプレイ側で解凍しても問題ありません。
リアルタイム処理が必要になるのは、ヘッドマウントディスプレイの角度に応じて描画する画像の位置を変更する程度で、大したコンピューティングパワーは必要とせず、三次元空間を処理する場合に比べ小型に安価に作ることができます。
そして、ヘッドマウントディスプレイ内の画像は、広範囲の視野に高精細で画像を表示する必要があるので高解像度である必要があります。
左右の目で表示する画像も変える必要もあります。
そのため、高解像度画像×2(右目と左目)のデータが必要となり、4Gの通信では通信速度が足りなくなる可能性は十分に考えられます。
まさに、5Gの出番ではないでしょうか?
と一瞬思いましたが、現在の感覚だと、ヘッドマウントディスプレイを家や、会社、施設以外で装着することはあまり想像できません。
家や、会社や施設には、高速な光ファイバーを引けますし、わざわざ5Gを使う必要があるのだろうか?と感じます。
5Gが普及したら、バスや電車、喫茶店などでヘッドマウントディスプレイを装着して高解像度の3D空間を楽しむ時代が来るかもしれませんが、会社や家で既に使えるVRがそこまで普及していない原因を解決してからのような気もします。 (ちなみに、車内でヘッドマウントディスプレイをかけたら超絶酔うことになるでしょう)
という事でVR/AR関連に関しては、「通信以外の技術革新とセットだったら5GでVRが普及する」というロジックもありうるかとは思っています。個人的にはホロレンズやGoogleグラスのような眼鏡型端末を当たり前のように外で使う世の中になってほしいです。そうなったら5Gは大活躍すると思っています。
IoT
期待度:☆☆☆★★ 4Gじゃダメ?5Gが必須のアイディアがあれば化けるか?
IoTは”Internet of Things”の略でモノのインターネットと訳されています。
様々なものが、インターネットにつながっていろいろなサービスを実現するというやつです。
家電がネットにつながって・・・に5Gは必要か?
家電をインターネットにつなげるために、わざわざ公共性の高い5Gの電波帯域を使い、月々の使用料金を払う必要があるでしょうか?家庭の無線LANを使えばよいと思います。
(無線LANの設定が苦手・・・という方にとっては4Gでも5Gでも使うメリットはあるかもしれませんが、設定の手間とコストの兼ね合いですね)
色々なセンサーを町中にばらまいて・・・に5Gは必要か?
色々なセンサーを世の中にばらまいて情報を吸い上げる・・・ という点に関しては、センサーをばらまき運用するコストを回収できるようなビジネスモデルを構築できるかがネックになると思いますが、そのようなビジネスがあったとして、5Gではないと実現できない理由は無いと思っています。
ただし、技術面ではありませんが、5Gを使うことにより通信コストとデバイスのコストが劇的に安くなるなら追い風にはなると思います。ちなみに2019年現在でもIoT用の通信プラン料金はだいぶ下がっていて、月額10円から使うことができる様です。今以上に価格を劇的に下げるのは厳しいかもしれませんね。
5Gは同時接続数が多いので、たくさんの物から情報を吸い上げることができるという説明があります。ですが、同時接続してデータを送信するようなセンサーは、後述する監視カメラくらいかと思います。
その理由は、たくさんセンサーがあったとしても、同時に接続する必要がないと思われるためです。通信が必要なタイミングだけ短時間通信すればよいでしょう。
ちなみに、バッテリー駆動で長時間稼働しその情報を無線で送るようなセンサーデバイスがありますが、そのようなデバイスは、消費電力を抑えるために、ほとんどの時間は通信を切っています。
計測したセンサー情報はメモリにためておいて、通信が必要だと判断した場合に通信を開始し、アップロードが完了すると通信を切るというような動きをします。
そのため、このようなセンサーデバイスはほとんどの時間通信を切っており同時接続するシチュエーションはあまり発生しません(もちろん数や通信頻度によりますが)
っとIoTについても否定的な意見を考えてみましたが、私の想像力が足りないだけで、アイディア次第では5Gが必要なシステムがあるでしょう。
そのようなアイディアが生まれることを期待しております。
監視カメラもIoTに属すると思ったのですが、監視カメラは5Gと相性抜群だと思うので、別のカテゴリにしました。
スマート農業
期待度:☆☆★★★ イニシャルコスト VS ランニングコスト
この分野でも、ネットワークは重要になってくると思いますが、5Gである必要があるのか?という点が引っかかります。
各種センサーとの通信を考えた場合ですが、センサーへの電源供給を有線で行うのなら、通信用の線を一本追加すれば通信できますし、PLC(電力線を用いた通信)という技術を使えば、通信線も必要ありません。
という事で、電力供給を有線で行う場合に無線通信をするメリットはあまり考えられません。
ですが、太陽電池や蓄電池を使って運用する場合は無線化するメリットは非常に大きいです。
また、センサーだけではなく、農薬を散布するドローンや、無人で走行するトラクタなどを考えるとやはり無線通信は必須になるかと考えられます。
では、無線通信を何で実現するのが良いかという話になります。
データ量の少ないセンサーとの通信だったらZigBeeなどでメッシュネットワークを組めば大量のセンサーを広範囲に配置することができます。
無人走行するトラクタ―などには、無線LANでネットワークを組んだり、他の無線規格を使って通信するという方法も考えられます。
また、ドローンや農薬散布用のラジコンヘリは5Gがない現在でもすでに活躍しているので、5Gがないと実現できない技術ではないでしょう
このように、自前でネットワークを作るのならイニシャルコスト(初期投資)は高くつくかもしれませんが、ランニングコスト(月額使用料)は大幅に抑えられます。
5Gを使う場合は、イニシャルコストは抑えられるかもしれませんが、確実にランニングコストが発生します。
監視センターと農地が直接通信できない場合は、5Gをルーターとして使うのは手かもしれませんが、4Gや光ファイバや有線LANも候補に入れたうえでコスパが良いものを選ぶ事になると考えられます。
農業もビジネスなので、結局は、イニシャルコストとランニングコストを考慮に入れたうえで、どの方式が優位かという事が重要になってくるでしょう。
モバイル端末のシンクライアント化
期待度:☆★★★★ 個人的にやってほしい分野、いやできるでしょ!
これは、個人的に5Gと相性がいいと想像している分野です。
シンクライアントとは、端末側には必要最低限の機能だけを搭載して、重たい処理をサーバー上で処理させる仕組みです。
例えば、端末側には、各種センサー類、モニター、スピーカー、最低限の処理装置と記憶装置、バッテリーだけを搭載します。
端末で画面の操作や写真撮影などの入力を行い、その情報をサーバー側に送ります。
サーバー側では、入力された情報をもとに処理を行い、画面や音等の結果を端末に送信します。
端末側では、サーバーから受信した処理結果を受けて、画面を表示したり音を鳴らしたりします。
モバイル端末をシンクライアント化するメリットは下記のようなものが考えらえます
- OSを含めすべての処理はサーバー側で実行されるので、モバイル端末は小型、軽量で安価なものが使える。
- データの保存もサーバー側で行うので、サーバー上のOSにログインできれば、どんな端末からでも使用できる。
そのため、外出先で端末をレンタルしたり、友達の端末を借りても、いつもと同じ環境で使用できます。(実態はサーバー上にあるので) - OSがバージョンアップしても、サーバー上でアップデートされるので、ハードウェアが古くて新しいOSが使えないという事はない
- サーバーでは、コンピュータリソースを動的に変更できます。例えば3Dゲームで遊ぶときはハイスペックマシンとして動かして、普段は低スペックマシンとして動かすという使い方もできます。
そのため、処理が遅いという理由でハードウェアを変える必要はありません。 - 端末を紛失しても、実態はサーバー上にあるので情報が流出したり情報が無くなってしまうことはありません
ハードウェアを買い替える必要があるときは、ハード的に壊れたときやカメラなどのセンサーの性能を上げたいような時だけになります。
実際にこのような技術はPCの分野で結構使われていてWindowsだとリモートデスクトップ接続といわれています。
私も、普段からリモートデスクトップを頻繁に活用しています。
最近は、ネットワーク環境もリモートデスクトップの技術も向上しているため、ほとんど違和感なく、時にはリモートでPCを操作していることを忘れてしまうレベルになっています。
スマートフォンからも、リモートデスクトップ接続ができるので、外出先からPCを操作したいときはリモートデスクトップでPCを操作しています。ですが、4Gだと遅延が発生することがあり、今一歩だと思っていました。
5Gとエッジコンピューティングを活用すれば遅延も許容範囲になると思われますので、実用に耐えうるレベルでサービスが提供できるのではないでしょうか。
ちなみに、リモートデスクトップでメールやエクセルなどの操作を行うときは1Mbpsも出ていれば十分で、全画面の動画を見る場合は数百Mbpsは必要になります。
Googleあたりが、クラウド上に、リモートで接続可能なAndroidOSを動かすサービスを開始してくれるんじゃないかと期待しています。
できれば、マイクロソフトとアップルに頑張ってもらって、WindowsやMacと連携した形でスマートフォン用サービスを提供してほしいですが・・・
監視カメラ(や盗聴デバイス)
期待度:★★★★★ 5Gで実現する!夢のような監視社会
この分野においては、5Gは大活躍すると思います。
画像、音声、動画データは容量が重いので情報を吸い上げるには通信速度が重要になります。
また、監視カメラは町中にばらまかれています。
例えば、特定の人物が現在どこにいるかを調べようと思ったら、①監視カメラ側に探したい人物の情報を送り検索させるか、②画像データを吸い上げクラウド側で探したい人物を検索することになるでしょう。
画像認識はAIが得意とする分野です。
①の場合、全ての監視カメラに人物検索ソフトを搭載して検索させる必要があります。そのためには、カメラ側の処理能力も高める必要がありますし、ソフトウェアのアップデートや検索する人物の特徴などをカメラに送る必要もあります。
過去のデータも検索対象に入れたいので大容量ストレージも各監視カメラに備えておくことが必要なります。通信量は少なくて済むので5Gである必要はないでしょう。
ですが、全監視カメラに同じ規格の人物検索ソフトを導入し、そのソフトを回せるスペックのハードを用意しかつ、ソフトのアップデートをし続けるのは効率が悪いと考えます。
②の場合は、画像データをクラウドにあげる必要はありますが、画像が吸い上げられれば、どんなカメラであってもかまいません。
通信で吸い上げた画像データからクラウド側に搭載した人物検索ソフトが人物を探せばOKです。
(AI等を使った人物検索ソフトを例に挙げましたが、人が目視で確認する場合も、ばらまかれた監視カメラの場所にわざわざ出向くか、ネットワークで吸い上げて、移動せずに確認するか、で考えると画像を吸い上げたほうが楽です。)
ただし、データを吸い上げる場合は、膨大な通信量が必要になります。そこで、5Gの出番です!
例えば、警察が、ある地域に潜んだ犯人の場所を、監視カメラの映像から特定しようとする場合をイメージしましょう。
その際、その地域の通信量は一気に増えますが、通信速度の速い5Gなら大丈夫です。たくさんの監視カメラと一斉に通信を行いますが、5Gなら同時接続が得意なので問題ありません。
もちろん有線ネットワークや無線LANでつながっている監視カメラには5Gは必要ありませんが、監視カメラが設置してある場所は有線LANを引くのも大変な場所だったり、無線LANの電波が届きづらい場所にある場合が多いと思われます。
警察が、犯人を特定するのを例に挙げましたが、テロリストやスパイの情報を収集して犯罪を未然に防いだり、ライバルの秘密を盗み見て弱みを握って陥れたり、企業の機密データが表示されているPCのディスプレイを監視カメラでキャプチャして株取引で大儲けしたり、アイディア次第で莫大な力を得ることができる大変便利なツールになりますね!
5Gと監視カメラは相性抜群ですが、我々一般市民はアクセスできない情報になると思います。
このように、権力を握るのに大変重宝するツールになりえるので、各国がなりふり構わず5G技術を推し進めるのも納得がいきます。
個人的に5Gに期待すること
3つだけです。
・混んでいても極端に遅くならない
・速度制限を気にせず通信できる
・今より、安く運用できる
5Gの説明を聞いていて、しっくりこない点
・通信速度が10Gbpsとか20Gbpsといわれているけど、普及した時の実効値がどの程度になるのか?(そろそろベストエフォートで宣伝するのは禁止にしてほしい)
・高信頼性とうたわれているけど、命にかかわるような通信に使えるレベルなのか?5Gの通信不具合で事故が発生したら通信会社は責任とれる?
私は、どうしても有線ネットワークのほうが信頼性が高いという固定観念があるんですが、もしかして5Gって、有線ネットワークの線が切れたりソケットが抜けたりする確率より、通信が途絶する確率が低いってこと?もしそうなら、私は根本から5Gを理解できていなかったと反省します。
・家庭や会社や施設で引いている光ファイバを使ったネットワークや無線LAN環境より優れている点があるのか?(もちろん移動通信できるという優れた点があるのはわかっているのですが)高解像度の動画が見れますとかVRとか遠隔医療の話を聞くと、それって今のLAN環境でやれば良いのでは?なんで5Gとセットで説明されるの?と思ってしっくりきません。
最後に
5G時代の波に乗れ!ビジネスチャンスだ!このパラダイムシフトを見逃すな!という声が多く聞かれますが、キャッチ―なイメージだけが先行しているような気がしています。
今回はあえて、否定的な視点で5Gについて考えてみましたが、誤解していただきたくないのは、5Gなんて不要だと考えているのではなく、私自身は5Gで世界が変わることを期待しています。
ただ、それは、現在語られているような未来ではなく、まだ表に出てきていない、5Gにしかできない全く新しいアイディアなのではないかと思っています。
そんなアイディアを誰よりも早く見つけて、一儲け世の中に貢献したいです。
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